狼料理店 [・・・・・・・]
新作: 質問の多い料理店
二人の若い紳士がすっかりイギリスの兵隊の形をして、ぴかぴかする鉄砲をかついで
白熊のような犬を二匹つれてだいぶ山奥の、木の葉のかさかさした所をこんな事を言いながら、
歩いておりました。
「つかれた・・・」(T_T)
「家に戻ってトマトスパゲッティー食べたい。」(^o^)丿
それはだいぶの山奥でした。
案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山がものすごいので、その白熊のような犬が、二匹一緒に目まいをおこして、
しばらくうなって、それからあわをはいて死んでしまいました。
「実に僕は、二千四百円の損害だ。」と一人の紳士がその犬のまぶたを、ちょっと返して見て言いました。
「僕は二千八百円の損害だ。」と、もう一人がくやしそうに、頭をまげて言いました。
「僕はもう戻ろうと思う。」 「さあ、僕もちょうど寒くはなったし腹は空いて来たし戻ろうと思う。」
「そいじゃ、これで切り上げよう。なあに帰りがけに、昨日の宿屋で、山鳥を十円も買って帰ればいい。」
「兎も出ていたねえ。そうすればけっきょくおんなじこった。では帰ろうじゃないか。」
ところがどうもこまったことは、どっちへ行けば戻れるのか、一こうけんとうが付かなくなっていました。
「どうも腹がすいた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「僕もそうだ。もうあんまり歩きたくないな。」
「歩きたくないよ。ああこまったなあ、何か食べたいなあ。」
「食べたいもんだなあ。」
二人の紳士は、こんな事を言いました。
その時ふと後ろを見回すと、りっぱないっけんの西洋作りの家がありました。
そして玄関には、RESTAURANT 「西洋料理店」WOLF HOUSE 「狼軒」
という札が出ていました。
「おや、こんな所におかしいね。しかし、とにかくなにか食事ができるんだろう?」
「もちろんできるさ。かんばんにそう書いてあるじゃないか。」
「入ろうじゃないか。僕はもう何か食べたくてたおれそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。
玄関は白いレンガでくんで、実にりっぱなもんです。
そしてガラスの開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
「どなたもどうかお入りください。けっしてごえんりょはありません。」
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日たいへんだったけれど、
こんどはこんないいこともある。この家は料理店だけれどもタダでごちそうするんだぜ。」
二人は戸を押して、中へ入りました。そのガラス戸のうらがわには、金文字でこう書いてありました。
「塩はどこから取れるんですか?」
二人はすこし考えてどうじに「海!」と答えました。
そのあと、むこうのほうでがたがたと音がして戸が開きました。
二人は次の部屋に入って行きました。
すると、おばあちゃんがベッドに横たわっていました。
一人が聞きました。「何でそんなに目が大きいの?」すると「それはおまえの顔を見るためだよ。」と、おばあちゃ
んが言いました。そのあと、もう一人が聞きました。「何でそんなに口が大きいの?」
しばらくするとおばあちゃんはベッドから消えていて二人が後ろを見たら、怖ろしいおおかみの姿が見えたのです。
おおかみは答えました「それはおまえたちを食べるためさ!!」。
「おしまい」
作:ぱたーと「宮沢賢治」
二人の若い紳士がすっかりイギリスの兵隊の形をして、ぴかぴかする鉄砲をかついで
白熊のような犬を二匹つれてだいぶ山奥の、木の葉のかさかさした所をこんな事を言いながら、
歩いておりました。
「つかれた・・・」(T_T)
「家に戻ってトマトスパゲッティー食べたい。」(^o^)丿
それはだいぶの山奥でした。
案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山がものすごいので、その白熊のような犬が、二匹一緒に目まいをおこして、
しばらくうなって、それからあわをはいて死んでしまいました。
「実に僕は、二千四百円の損害だ。」と一人の紳士がその犬のまぶたを、ちょっと返して見て言いました。
「僕は二千八百円の損害だ。」と、もう一人がくやしそうに、頭をまげて言いました。
「僕はもう戻ろうと思う。」 「さあ、僕もちょうど寒くはなったし腹は空いて来たし戻ろうと思う。」
「そいじゃ、これで切り上げよう。なあに帰りがけに、昨日の宿屋で、山鳥を十円も買って帰ればいい。」
「兎も出ていたねえ。そうすればけっきょくおんなじこった。では帰ろうじゃないか。」
ところがどうもこまったことは、どっちへ行けば戻れるのか、一こうけんとうが付かなくなっていました。
「どうも腹がすいた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「僕もそうだ。もうあんまり歩きたくないな。」
「歩きたくないよ。ああこまったなあ、何か食べたいなあ。」
「食べたいもんだなあ。」
二人の紳士は、こんな事を言いました。
その時ふと後ろを見回すと、りっぱないっけんの西洋作りの家がありました。
そして玄関には、RESTAURANT 「西洋料理店」WOLF HOUSE 「狼軒」
という札が出ていました。
「おや、こんな所におかしいね。しかし、とにかくなにか食事ができるんだろう?」
「もちろんできるさ。かんばんにそう書いてあるじゃないか。」
「入ろうじゃないか。僕はもう何か食べたくてたおれそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。
玄関は白いレンガでくんで、実にりっぱなもんです。
そしてガラスの開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
「どなたもどうかお入りください。けっしてごえんりょはありません。」
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日たいへんだったけれど、
こんどはこんないいこともある。この家は料理店だけれどもタダでごちそうするんだぜ。」
二人は戸を押して、中へ入りました。そのガラス戸のうらがわには、金文字でこう書いてありました。
「塩はどこから取れるんですか?」
二人はすこし考えてどうじに「海!」と答えました。
そのあと、むこうのほうでがたがたと音がして戸が開きました。
二人は次の部屋に入って行きました。
すると、おばあちゃんがベッドに横たわっていました。
一人が聞きました。「何でそんなに目が大きいの?」すると「それはおまえの顔を見るためだよ。」と、おばあちゃ
んが言いました。そのあと、もう一人が聞きました。「何でそんなに口が大きいの?」
しばらくするとおばあちゃんはベッドから消えていて二人が後ろを見たら、怖ろしいおおかみの姿が見えたのです。
おおかみは答えました「それはおまえたちを食べるためさ!!」。
「おしまい」
作:ぱたーと「宮沢賢治」
2014-02-18 13:01
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